ひとつ わたし
木立 悟





窓から窓へ
夜は動く
夜に夜を重ね
またたく


冬の水の上
羽の羽やまず
午後の双つ穴
昇るはばたき


わたしはわたしに到かない
水彩のまわり道
夕べは早く
夜は曲がり角


冷えた波が
冷えた波に降る
砂を前に
砂を見つめる


行方は散り
わたしになる
霧の熱
月しかない夜


光はまぶたの上に消え
ふたたび網の目に巡る
あふれさせるものはない
ただそれはあふれでる


羽を捨て降り立ち
羽を生み飛び立つ
羽は土に降る
羽は 土に鳴る


ひとつをひとつ
ふたつをふたつに書きとめる朝
内なる不可視の絶え間なき
わたしをわたしに寄せるいとなみ





















自由詩 ひとつ わたし Copyright 木立 悟 2011-03-21 17:39:10
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