車に轢かれる夢を見ていた
健
音楽を聴いている
夜
街灯の下
あたりに歩く人の姿は無い
無表情な乗用車の
遠慮のないヘッドライトの光
と時折すれ違いながら ふらふらと進む
耳をふさいだまま歩くのは
危険
だから
イヤホンは付けていない
街の音を聞くのは
素敵な事
だから
イヤホンは付けていない
けれど
音楽は流れ続ける
2時間前に交わした会話や
そこにあった体温や
なんとも言えない居心地の良さや
自らの笑い声 が
次々と浮かんでは すぐに消えて
いかない
路上に捨てられた誰かの煙草が
燻り続けたまま 小さな光を放っている
空っぽになった空を見上げ
黒の中に溶けていった青を思う
その色も いずれ終わってゆくのだろう
歌いたかった
鳴りやまない誰かの歌を
貪り食いながら
自分の中で膨れ上がっていく自分
それを吐きだすために
ただ
歌いたかった
壊れてしまう前に
消えてしまう前に
歌いたかった
壊れてしまいたかったから
消えてしまいたかったから
音楽を聴いている
夜
街灯の下で
歩道を歩きながら
、