それでも回送バスははしってゆく
石川敬大




 ほら横なぐりの
 ぼたん雪のなかを
 回送バスがはしってゆく

 窓を曇らせ
 満員にひしめいた乗客の気配だけを乗せて
 がらんと無人の灯りを点して
 回送バスがはしってゆく

 消息がない
 とは
 息がとだえて感じられないこと
 なのに、ひしめいた気配だけを感じる

     *

 すでに何周も
 周回遅れになった
 長距離ランナーのようにせつない
 虚ろなおもいを抱えて
 はしってゆく


 ぼたん雪のなか


 波がひいたガレキの
 タイヤのシャフトに漂流物がひっかかっている
 腹をみせ横倒しになり窓からカーテンをのぞかせている
 それでも回送バスは
 岬をまわり入江の町並みをぬけて
 営業所をめざしてはしってゆく






自由詩 それでも回送バスははしってゆく Copyright 石川敬大 2011-03-19 14:24:00
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