わたる
乾 加津也


だれのものでもない
できた橋を
わたる
生き物には足があるようだ
二本あればわたれるようだ



いままでどおりなら
唄い酒場のような居場所があり
(どこか)わたってきたところを登記する
所有とか貸借とか
精子とか卵子とか



わたらせる足からコントロール
機能がなくなる
皮から
 はがれ
ずりずりと筋肉
 解(ほど)け
大腿骨は砦の石壁のようにそそり立ち
闇を浮かびあがらせる松明になれれば
よい



だれにも見える
眺望があるのか
なら
じぶんの足を持ちあげて
スケールの投身をはたそう
どこにでも鳴りわたる
風(ぼうばく)を
愛そう





自由詩 わたる Copyright 乾 加津也 2011-03-19 11:56:08
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