わたる
乾 加津也
だれのものでもない
できた橋を
わたる
生き物には足があるようだ
二本あればわたれるようだ
いままでどおりなら
唄い酒場のような居場所があり
(どこか)わたってきたところを登記する
所有とか貸借とか
精子とか卵子とか
わたらせる足からコントロール
機能がなくなる
皮から
はがれ
ずりずりと筋肉
解(ほど)け
大腿骨は砦の石壁のようにそそり立ち
闇を浮かびあがらせる松明になれれば
よい
だれにも見える
眺望があるのか
なら
じぶんの足を持ちあげて
スケールの投身をはたそう
どこにでも鳴りわたる
風(ぼうばく)を
愛そう