洗ってない詩人の臭いがするんだよ
虹村 凌
俺のジーンズとあんたのスカートがベッドの下で絡まる事は無い
それはロフトに敷いた布団であっても同じだ
ロフトの下の冷たい床の上で僕らの服は絡まったりしない
でも最後に絡まった俺のセブンスターズとあんたの金色のマルボロの煙は
何年前の事だったか覚えていないけど
下北沢の薄暗い喫茶店だったのは
こっちを向けよ
外が晴れていようが雨だろうが
暖かい日差しの太くて柔らかい匂いも
雨に濡れたアスファルトの細長い匂いも邪魔だ
俺とあんたの匂いに泳いで溺れて沈んでから浮かんでいきたい
だからあんたが見せてくれた夢の片鱗くらい楽しませてくれよ
ほら外は世界だぜ
あんたは可愛いんだぜ
手を握ってもいいかい
キスをしてもいいかい
セックスしてもいいかい
何だって?ごめん、匂いがうるさくて何も聞こえないんだ
それとその微弱な重力を持つあんたの鈍い目に押し潰されそうなんだ
あぁ
日当りの良い二階の部屋に住みたい
壁にはパチーノのポスターを張って
脱ぎ散らかしたラバーソール
日に焼けたベッドマットの上で眠るのさ
ベッドマットに残っちゃったシミとか
キャンバスに跳ねちゃったシミとか
どうでもいいけど残れば良いと思う
あんたも俺が何を言ってるかわかんねぇのか