言二葉 / ****'04
小野 一縷


泥沼 
暗い泥の中 うずくまる 
わたくしの想いは 気泡になって
ゆっくりと のろのろと 浮き上がる
底のない 沼から ゆっくりと 浮上する
ドロドロの水圧に 耐えられるように 螺旋に
大きく 大きく じんわりと 回って。

季節は 冬 十二月です。
沼面には 白い 雪が 素早く降って
柔らかな 泥を打ちつけています。
嗚呼 まだ 浮き上がれないの だろうか。
季節は 十二月 冬
だと言うのに。
この沼の 中の 時間の 経過は どうした ことだ ろう
いつになって 浮き上がって 弾けて
この想いを 音にできるの だろう
この想いの 気泡の 弾ける 音 音 音
何処までも 届いて欲しいのです。 
冷たく 素早く 雪を 零す 雲までも
破れた 気泡 想いは 届く
その音は 降る雪に 撃ち抜かれ
その摩擦は 旋律を 生む 
それは 音楽です。
弾ける 気泡 降りしきる 雪 
緩く 高く 遠く 深く 
染み込む 大気に
聞いていて 下さい 眠れぬ者の 夢見の言の葉
それは 詩です。
音楽 と 詩が 沼と 空の 間
あなたと わたくしの 間を 今
こうして 繋いでいるのです。

音楽も 詩も  そう 
人と人 誰かと誰か あなたとわたくしを
繋げる為に 生まれたのです。 

寒くはない ただ 重く 暗い ここは。
わたくしは 一人 です。
あなたは 何人ですか?
わたくしは この暗い 泥の中
雪空の 厳しさと 
暖かい 誰かを 想って います。
ただ わたくしは もう 長い間 此処に 居て
余りに 永く 居すぎて
どちらが 沼面 なのか もう
分からないのです。
わたくしは 長い間 この沼の中を 
ただ 浮遊しているだけの

想い 

そのもの なのです。









この詩を読んでくれて ありがとう。
ぼくは 二月の 雪の多い日に 生まれました。
もう誕生日に 喜びを感じなくなって 随分経ちます。

今夜も ぼくは暗い沼の中 降りしきる雪の下 
眠れぬ夜を 過ごすのです。
ぼくは一人ですが そんな自分の為でなく 
あなたの為に 伝える言葉があります。

「おやすみなさい」 

ぼくの大好きな 言葉の 一つです。

「おやすみなさい」


ありがとう。 

お互いに  いい夢を。







自由詩 言二葉 / ****'04 Copyright 小野 一縷 2011-03-18 17:28:01
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