DESOLATION ROW(廃墟の街角)
……とある蛙


跡形もなく過ぎ去った過去は
過去の栄光ではなく日常のホームドラマで
思いやりのある家族とお節介な隣人
歴史好きの親父とミーハーな娘
東京に行きたくて
髪の毛を染めたキャサリン
着ているかわいい服は
インターネット販売か
通販で手に入れたもの
東京でも最先端だったと
彼女の同級生が
花を添えながら呟く


漁師町の沢山の猫に
毎日鰯のごちそうで
街ではプロレスの興業のビラが
風に舞って街路を散らかす
町立体育館に行く支度
年に数度の楽しみで、
マスクドマンのプロレスは
ここいらの若い衆のお楽しみ
猫がゆっくり欠伸する。


ヘルスセンター代わりの公民館
踊る踊るは楽しい老後
みんな知っている顔見知り
食事も豪華な活き作り
もちろん酒も一級品
踊れや踊れまだ昼は過ぎたばかり
日が沈むには早すぎる

鉛色の空は春先だというのに
海風に煽られた白い粉雪が燻り
数日前
突然盛り上がった黒い海面は
街の半数以上の人間と
大多数の建物と
一緒に暮らしていた犬猫と
一緒に

ぐわぁらんらんぐぁららん
ぐわぁらんらんらんぐわぁらんらん
くあらんくらんくらんくあらん
ごうやごやごうやこーほーこーほー
くあらんくらんくらんくあらん
こうやこうやこうやこーほーこーほー

そのまま濁流 渦を巻き
そのまま沖へ引き摺られ
血染めも何も綺麗なもので
腹の膨れた蛙もなく
ただ泥の絡み付いた廃材置き場
だんだらぼっちが躓いて
だんだらぼっちが吹いた息
だんだんらぼっちが震えてる
鋸の刃先にしがみついた日常が
ただ突然消え失せた。
そのあと真っ暗闇の無音の夜
まだ春にはほど遠い

××××××××××××××××××××××××××××××××


発電所付近の崖で遊んでいた
タケルはオトちゃんと離ればなれ
だんだらぼっちが邪魔をする
導火線に火がついて
モグラ叩きの爆発で

タケルはオトちゃんに会いたくて
そっと桜木植えたのだが
そのまま桜木は朽ち果てた
花咲く前に朽ち果てた


タケルはそれでも植え続けた
いつかオトちゃんに会いたくて
何度も何度も植え続けた
いつかオトちゃんに会えると信じて




自由詩 DESOLATION ROW(廃墟の街角) Copyright ……とある蛙 2011-03-18 16:54:08
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