『光よ届け』
座一

カセットコンロが 家族の顔を照らす
真っ暗闇 手さぐりで 求め合ったぬくもり
ただ いっしょに
居られるってことだけで
こんなにも 幸せ 感じられるんだね


私たちの すべてを ためしているかのように
容赦ない波の壁が 切り立つ


きみの涙が 教えてくれる
自分のことばかり 考えてる場合じゃないって
きみの涙が 教えてくれる
自分にできることが 今 何なのかを



受話器にすがりつくように 無事を確かめたくて  
何十回もかけ直して やっとつながった電話
大丈夫だよって
体温までも伝えたくて
こころでは しっかりときみを抱きしめている


あっというまに すべてを 奪い去ってゆく 
自然の猛威に なすすべもないけれど


きみの笑顔が教えてくれる
今この瞬間が かけがえのないこと
きみが生きていてくれる
それがどれほど 尊いかということ


グリコの 電気が消えた
その光が わたしの胸にともった
ネットから贈る いくらかばかりのハナミズキ
「微力だ」と申し訳ないような顔にも
チリは積もれば山となり
いつか きみのまいた 小さな種が
春の訪れのように 咲き誇るだろう


天使たちがキャンドルを持って 飛び立ってゆく
混乱の中 さまよう人に 希望の光を
節電の祈り こちらの分まで
光よ 届け






自由詩 『光よ届け』 Copyright 座一 2011-03-17 21:01:55
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