経過 / ****'99
小野 一縷



機械どもの産声を聞いた
静電気の金切り声を聞いた
真空内部のわななき
コイルの唸り声
セロトニンのうねり
超伝導
磁性の旋律
粒子の加速音
思考は人間の内部的産物
そもそも この世に存在しない物質

微細電流
飛散する電子
融合 結合 分離
聞こえる
震動している

現象を固定する
書き写すという行為
生れ落ちる詩は
新しい命
現象を母として
言葉を父として
行われる結合 融合
名も無く 形も無い子が 生まれた

形無きぼく?
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく
何処まで行っても ぼく

自我が邪魔をする
命が邪魔をする
悲しくなる

つまらない感情が
邪魔をする
ちんけな集団意識が
邪魔をする
寂しくなる

壱個である限り
何処まで行っても ぼく
誰かがいれば 弐個
皆がいれば 何個
ぼくである限り
何処まで行っても ぼく


ぼくは未だ 見者で在りえない





自由詩 経過 / ****'99 Copyright 小野 一縷 2011-03-17 17:15:33
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