ポエティックコラージュ 〜スロウモーション / ****'99
小野 一縷

象牙色の季節
その風景画の中を 汽笛を燻らして
蒸気機関車が きみの笑顔を揺らして
ほら 行くよ


音もなく上昇してくる太陽に
映画のエンド・テロップのような終わりを感じた朝


静かに揺れる海の輝きは
冷えた屋根の上を旋回する鳥の群


集合住宅にかかる雲は 稲穂のように斜めになびいて
遥か行こうと誘ってる


針金細工の枯れ木が その鋭さで低い風の
流れを細長く裂いていた


重厚にくすぶる氷山
吹き下ろす風は空からの地吹雪


真横へと 太陽が逃げてゆく
素早い雲を従えて今日が夕陽を追い駆ける


隙間なく濡れた硝子に影を舞わせて
夜空をそよぐ雪の片


月の日影を一層黒くする森を掻い潜り
星々より輝く街の中へ 飛び降りる


雪原の果ての枯れ藪は鉄条網の輝きで
夜へと走る列車と並走する


海岸線をなぞって ゆっくり思考を巡らせて
明日へと帰っていく


空白が埋まらない 現実で埋まらない
記憶の蓋は開いたまま 昨日を蒸発させてゆく


24時の断罪 優雅な遮断機
諦めや悔しさを 秒針が毎秒切り落とす
この部屋のホロコースト
誰が訴えを申し出る?


祈るように構える拳闘士

撃つのは鏡 撃つのは鏡

撃つのは鏡 撃つのは鏡


霧散する23時59分以降
破片の飛沫 写すもの
瞬きの拳で補足しろ


拳の中に ひとつだけ

「ぼくは きみが 大好きだ」









自由詩 ポエティックコラージュ 〜スロウモーション / ****'99 Copyright 小野 一縷 2011-03-17 16:44:33
notebook Home 戻る