笑い話 / ****年不明
小野 一縷
ぼくは誰からも
愛されていると感じたことが無い
付き合っていた人は何人かいる
好かれていたことはある
求められていたことはある
何人目かの君は 愛していると言ったけど
その意味が分からなかった
伝わってこなかった
誰かを好きだったことは何度かある
でも
見栄ではなく 執着ではなく 好みではなく
誰かを愛していたことは無い
何人目かの君は 愛はそんな理屈じゃないと言ったけど
その意味が分からなかった
伝わってこなかった
きみは 随分と長い間 通院している
その半分の責任は ぼくにある
電話で きみが言った
「ぼくが死んでも *はしっかりしていてよね」
「その時は責任をとるよ」
ぼくの涙声に
きみは言った
「愛って不思議だね」
「ああ」
ぼくは頷いた
きみと知り合って*年 この繋がりを
愛と呼ぶことに 何の迷いも 驚きも無かった
その時 「欲望無き愛」を ぼくは知った
独り
生理的な欲求不満と 相反するただ一つの愛を ないまぜにして
今日も誰かのことを 想ってみる
ぼくは まだ
愛を言葉にする術を知らない