小田原城にて
吉岡ペペロ
政府に文句などない
最悪の事態なんて
タイムリーに通達されるわけない
四五時間後がいいとこだろう
それでも速いぐらいだろう
いま小田原の弟のところにいる
小田原からだと最悪でも
アドバンテージを持って動ける
さっき三号機が爆発した
命を賭けてやってくれているひとがいる
小田原城を見つめている
テレビを見つめるより精神的にいい
萎縮しているあたしの精神
土と石の参道を
うららかな光に浮かされながら歩く
埃になったみたいだ
楽天的になれない
精神力が強いって楽天的だってことだろう
行動は悲観的にあたまのなかは楽天的に
だからいま小田原城を見つめに来ている
末期の眼みたいになって
瓦礫は木と白いコンクリと泥だった
それ以外はみんな泥でコーティングされていた
ここからなにかを始めろって
まだなにも終わってもないのに言うな
まず生きてやる
生き抜いてやる
小田原城をしたから見つめている
限りないやさしさを感じている
四百年いじょうもまえにも
ここにこんな色した質感の感情で
生き抜いてやる
はんぶん萎縮した気持ちでそう思っていた
ここも計画停電で入館はできなかった
まわりの商店も閉まっている
生きてやる
だんだん城が最近つくられた建物のように思えてくる
さっき家をでるまえ弟が言ってた
小田原城は難攻不落のお城だったんだ、
そのことばに支えられて城を見つめている
北東に命を賭けてやってくれているひとがいる
ここにわたしがいる