刑部憲暁

くちびるを

ささやきが 漏れでると

くちびるを

漏れでた ささやきは

ちょうどその時 部屋にある

オレンジ色の ひかりになる

それから 部屋の空気を

豊かにしわ寄せて 揺るがせる

ささやきは 閉じた遮光カーテンの隙間から

そっとまどの外へと 漏れでると

あの川の水のおもてに触れる ささやきは

川となり流れ去る

ささやきは もう海にまで広がる

どの岸辺にも 浜辺にも

どんな片隅の岸壁の澱みにも

打ち寄せる細波ささなみとなる



声は満ちている

大気の 青空の

腹いっぱいに膨らんだ

風の声が いま満ちている


自由詩Copyright 刑部憲暁 2004-11-04 14:31:38
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