晴れた朝と洗濯物と
涙(ルイ)
土曜の午前6時
カーテンを開ければ 外は雲ひとつない晴れた空
散らかった部屋を朝日が容赦なく照らし出す
食べ散らかした冷めてしまったデリバリーピザ
飲み散らかしたいくつかのチューハイの空き缶
書き損じの原稿用紙とペンとそれから
拭えない自尊心と憂鬱なため息
笑いにもならないダメな人生すべてを
さらけ出すキラキラの朝
昨日も失敗した 一昨日も失敗した
どこまでいっても ダメな自分を思い知らされる
正直がっかりだよ 自分にうんざりだよ
そんなに苛めないでくれよ
ただ一生懸命なだけじゃダメなんでしょ
解ってる 自分が悪いって事
よく解ってる 解ってるけど
今すぐこの場所から逃げてしまいたかったんだ
どこでもいいから
自分からずっとずっと遠いどこかへ
なのに なのにさ
逃げても逃げても 私がついてくるんだよ
ダメな自分がまるで影を踏むように
どこまでもどこまでも 追いかけてくるんだ
連いてくんなよ 私にかまうなよ
現実逃避? 34にもなってみっともないって
あんたは笑うかい
笑ってもいいよ
私だって笑えるものなら笑い飛ばしてしまいたいくらいだもの
ふと目を向けた先には溜まりにたまった洗濯物が
あ〜あ この1週間分の洗濯物をなんとかしなきゃ
ぶつぶつ云いながら色物と白物をよりわけてネットにぶちこんで
洗濯機に放り込む
カップ一杯分の洗剤が健気にも
せっせせっせと汚れを落としてゆく
ぐるぐるぐるぐる ぐるぐるぐるぐる
汗染み ほこり 食べこぼし
何もかもなかったことのように
まっさらさらに落としてゆく
目に見える汚れは洗剤で落せるけれど
心についた悲しみというしみは
どうやって落せばいいのだろう
外は憎たらしいほど青々とした空が広がっている
3月の少し冷たい風になびくまっさらさらな洗濯物は
かすかに洗剤の香りを漂わせている
生きることは汚れていくことなんだと
そういえばどこかの誰かさんがそんなこと云ってたっけ
漂白されたまっさらさらな心なんて
考えてみたらちょっと気持ち悪い
悲しみなんて本当は多くはいらないけれど
生きていく以上は 見なければいけないこと
聞かなくてはいけないことがたくさんある
勝ち続けることが必ずしも正しいわけじゃない
逃げたくなることもあるさ 負けそうになるときもあるさ
それでも ほんの一歩 いや半歩でもいい
前に進んでいこうとする意志があれば
きっとまた何度でも立ち直れる
風になびくまっさらな白いシャツ
ありふれたいつもの光景が
光に乱反射して
私にはとても
まぶしすぎたんだ