真冬のバラの株は
相差 遠波
真冬のバラの株は
棒っきれのような枝だけで
葉の一枚もついていない
そのくせトゲだけ多くて
触れれば刺すぞと脅してくる
私はその枝を
フェンスにひっぱって
好きな形に誘引したいんだけど
手はすでに傷だらけ
なんだってキミは言う事聞かないんだい?
こんな冬の寒空に
凍える手を励まして
針金でフェンスに
立派な網まで張ったのに!
そんなこと知るかとばっかりに
枝はあっちを向き こっちを指し・・・
真冬のバラの株は
痩せっぽっちの枝だけで
蕾の一つもつけちゃいない
そのくせトゲだけ立派で
触るな切るぞと脅してくる
私はその枝を
フェンスにひっぱって
思い通りに誘引したいんだけど
手はすでに傷だらけ
なんだってキミは人を傷つけるのさ?
こんな風除けもない場所で
かじかむ指にムリ言って
枝を傷つけないように
柔らかい麻紐で結わえているのに!
そもそも結うなとばっかりに
枝はバシンと跳ね返る
革手袋を履けばトゲは刺さらないよ
麻布じゃなくても針金で引っ掛ければいいさ
そもそも邪魔な枝なら切っちまえ
折れたっていいから好きな形にひっぱっちまえ
でもそんなことしたらしたで
大好きなキミが枯れてしまうって
私は知っている
革手袋だって ケガはなくなるけど
繊細な作業が出来なくなっちゃうしね
だってキミは意地っ張り
いつだって全身でトゲを出して
自分の好きな方にしか行きたがらない
ムリを強いたら枯れるほどに
自分を通すしか生き方を知らない
だから私はいつだって
傷をいっぱい手に作って
キミとの妥協点を探している
一緒に美しい庭を造ろう
私の思い通りにとはいかないけど
きっと春には
君は力いっぱい
キレイな花を咲かせてくれると信じてるよ