岩窟姫
こん

遠くを見るよ
とおくをみるよ
岩に開いた小さな窓から
とおくをみるよ

涙は軽石の窓枠に
音も立てずにすいこまれてゆく
誰か
小さな梯子でここまで
登ってきて
ザラザラに負けないで
私の手を取って

 (いつまですべすべだろうわたしの手)

ザラザラに負けないでお願いだから

 (けれどお願いなんてしたことない)

清らかな水の匂いがする岩肌に耳をつけると
どこかでバオバブが水を吸い上げる音がする
ドコカデ水たまりに血の混じる音がする

ああ 誰かのてのひらが空をみあげている

しろい骨のようなさんごのかけらで
十字架をつくりました
麻ひもをつけて首からさげました

ココハムカシウミダッタノデショウ

幾千年も岩のなかで祈りながら
ひっそりと涙を流しながら
旋回しそらへと還るたましいを
何度みおくったことでしょう

今日も地平線を
ひとすじの煙が


のぼってゆきます







自由詩 岩窟姫 Copyright こん 2003-10-14 22:21:36
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