思い出印のブレンド
電灯虫

思い出1匙。
買う買うといって今なお買ってもらえてない約束のおもちゃ。

思い出1匙。
けれども負ぶってくれた背中はごつごつした筋肉のベッド。

思い出1匙。
毎朝のテレビ争奪戦で何度も兄弟の縁を切る。

思い出1匙。
上京できるか否かの瀬戸際の,唯一最大の味方,兄ちゃんマン。

思い出1匙。
いつもいつも酔っては愚痴,こっちを勝手に悩まして,姉はさっさと明日への一歩。

思い出1匙。
何の根拠もないけれど,これでもかと,くれたピンチの中の肯定感。

思い出1匙。
的確すぎるのも問題だ,反省を通り越して腹が立つ叱咤激励。

思い出1匙。
朦朧とする熱の中で,はっきりと感じる家事でごつごつした手の愛。

重層過ぎて形容できず,私だけのブレンド家族。


自由詩 思い出印のブレンド Copyright 電灯虫 2011-03-08 01:10:30
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