思い出印のブレンド
電灯虫
思い出1匙。
買う買うといって今なお買ってもらえてない約束のおもちゃ。
思い出1匙。
けれども負ぶってくれた背中はごつごつした筋肉のベッド。
思い出1匙。
毎朝のテレビ争奪戦で何度も兄弟の縁を切る。
思い出1匙。
上京できるか否かの瀬戸際の,唯一最大の味方,兄ちゃんマン。
思い出1匙。
いつもいつも酔っては愚痴,こっちを勝手に悩まして,姉はさっさと明日への一歩。
思い出1匙。
何の根拠もないけれど,これでもかと,くれたピンチの中の肯定感。
思い出1匙。
的確すぎるのも問題だ,反省を通り越して腹が立つ叱咤激励。
思い出1匙。
朦朧とする熱の中で,はっきりと感じる家事でごつごつした手の愛。
重層過ぎて形容できず,私だけのブレンド家族。