永い終わり
村上 和

赤い毛糸のような歴史の先端で
ストローに口をつけて
永い終わりが始まった
息を吹き込んでそっと膨らませたビッグバン
洗濯物が揺れる小さな緑の庭で
生まれては弾けるように消える
幾つものシャボンの惑星が
回る私の周りを廻り
太陽みたいな微笑みが
光の向こうから照らしてくれていた


アインシュタインは
気付いていなかったんだと
私に力説している反重力が
永い終わりの途中
ささやかに咲いていた
一片だけ花びらを散らした花を摘み
読みかけの目に見えない物理学書に挟んで閉じる
歩いていた未知の塀の向こうから
幾つものシャボン玉が空へと昇り
光の向こうに星座を描いていた


時計のように円を描いて三回忌
おや、もうそんな時間かねと
三度目の独りで見る桜の木の下で
永い終わりを終えた
しがない惑星に手を合わせ
もうコレも要らないねと
古箪笥から一着の赤いセーターを取り出して
それを編んでいた光の頃を思い出しながら
丁寧に解いては
その歴史の糸端を新しい日々に引っ掛けて
また丁寧に
宇宙は柔らかく紡がれていく


自由詩 永い終わり Copyright 村上 和 2011-03-06 20:30:19
notebook Home