白と歩み
木立 悟
降りつづいては
落ち着いてゆく
肌の裏側
こがねの腺
無い手を透り
こぼれるもの
失くした姿を
響かせるもの
夜の土の上
たくさんの色が話している
まばたきが 追うつもりもなく
まばたきを追う
かわいた朝
ひと握りの従順
水は動く
一度に 動く
あこがれにあこがれているような桃色が
遠くに遠くにかすんでいる
指と指のあいだ
はためくもの
触れた朝触れぬ朝
差異は巨きく
巨きすぎて見えない
朝から外れ 朝あゆむ朝
ふたつの色が
互いの履歴を語りあう
下を向く冬
こぼれ得ぬ冬
ひと息ひと息つづいてゆく
白い胸を見つめる白い目
あきらめられた歩みから
譜面と行方をとりもどす
生きる限り内に残る
名の無い鉱を見つめつづけて
やがてやがて 花になるのか
花になるのは目ではないのか
紙から紙を切り離すたび
生まれる崖が周りを囲み
飛沫の壁を空に突き刺し
新たな花の匂いを降らす
捨て置かれたほころびの端
けものに絡み
霧に濡れ
朝の途中の朝にまたたく
長く平たい
ひとつの骨
踏みしめて 踏みしめて
ひとつの骨
地に居たものが地に戻り
その糧として色と音を喰い
外の外 外の外
白は白に話しつづける
粉という字のなかの十字
くちびるにくちびるにそそがれて
みな花に花に 囃し立てる
つばさつばさ つばさたれ
つばさつばさ つばさたれ