雨降り
向 奨吾
枕元をつつく 小さな唄は
屋根に注がれる 滴の仕業で
霞んでいく内側は
靄の色に染まっていた
劣情の欠片はハンマーで押しつぶし
青年の思い出は埃を払って棚へ
綺麗に整頓していれば
やがて窓から聞こえる 唄
目を閉じて
暗闇の下で そっと呟く
輪郭のない言葉たちが
冷たい頬を染めていき
雨粒は街中を沈めていく
坂道を駆け下り
屋根樋を伝い
アスファルトを染め
あやふやな世界を
全部洗い流して
自由詩
雨降り
Copyright
向 奨吾
2011-03-06 18:13:22