目的 ー道6ー
……とある蛙

 歩き始めの段階、道は同じ眺めのため選択間違いはよくあるのですが、間違いだと気づいても引き返す勇気がないため、どんどん先へ行ってますます道に迷ってしまうことがあります。特に最初選択した道が平坦で歩きやすい道などなおさらです。

歩いてきた道は
とても平坦で
全ての球体が静止している

歩いてきた道は
とても綺麗な道で
石ころ一つ無く、舗装れている。

歩いてきた道の先は
とても輝いていて
希望の光が満ちあふれていた。

歩いてきた道では
常に前を向いて
後ろを振り返ることも必要もなかった。

歩いてきた道の沿道には
鈴なりの多くの人たちが
歩いている我々を賞賛している。

歩いてきた道の周りには道標としての並木が
等間隔に機械的に植え込まれ
とても綺麗な景色を形作っている。

歩いてきた道は間違いではない
歩いてきた道に間違いはない
この道を選んだ自分に間違いはない。
この道を歩んできたことに後悔はしない。

素晴らしい道を歩いてきた。
自分の道は栄光に満ちあふれている。

しかし、道は永遠に続くわけもなく
そろそろ目的地が見えてくる。



目的地は思っていたより鈍い景色で
灰色のビルに囲まれた暗い木造平屋の一軒家
一軒家までの道は皹割れていて
しかも皹割れの間から雑草が生えている
草臥れた顔をした老婆が一人
その横には草臥れた下着とステテコ一枚の
老人が一人
何も言わずにビルの間の灰色の空を見つめている
そんな家に近づくと
老婆と老人は皮肉な笑みを浮かべてこう言った。


お帰り

ここが目的地であったか等
今となっては分からないので違うとも言えず
その場に立ち竦むしかない自分がそこにいます。


自由詩 目的 ー道6ー Copyright ……とある蛙 2011-03-06 16:24:39
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