【批評祭参加作品】ショートレビュー
相田 九龍


■みんなおばけ/小川葉さん■
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=162619

この作品には作者の茶目っけが存分に含まれている。そこに浸ってみると何度読み返しても面白い。「おばけがいる」というのは「いない」ことなんだろうな、と以前読んだときに思ったが、改めて読み返してみるとこの作品に組み込まれた軽妙なシステムは、「視点移動のシステム」なんだと気付いた。5つの連、ひとつとして同じ視点がない。言ってしまえば別々の5つの物語を組み合わせてこの作品は成り立っている。そして面白いことに「みんなおばけ」なのだ。癖になる。



■君に宛てて/Monkさん■
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=47350

2005年の現代詩フォーラムにおいて最もポイントを獲得し、最も萌えが探求された作品。作品を作るきっかけがあったのなら、すごい気になる。Monkさんが「お前らみんな萌え死んでしまえ!」と思いながら投稿したのか、それとも辛い過去を昇華させる手段として作品を作り投稿したのか。それにしても凄い。コメント欄のお祭りっぷりも微笑ましい。ももうさぎさんが泣いてたり、佐野権太さんが詩を投稿し始めたり、この作品に出会うことでまた物語が生まれている。




■弱いものから消えてゆく/ザラメ■
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=43408

同じく2005年のポイント順リストから。僕が現代詩フォーラム内でおススメを聞かれるとまず引っ張り出してくるのがこの作品。
本当の優しさや愛おしさ、強さがこの作品には刻み込まれている。今生きている僕らは、今消えようとしている何かより遥かに強い。その強さを忌み嫌うのではなく、本当の意味で「強く」生きていかなければいけない。そう思わせてくれる作品。
ベンジャミンさんがとても良い感想文を書いているのでそれを引用させていただく。
この作品の言葉はけして内向きなものではなく、そう、それこそが「戦いに似ている」ように思えます。いいえ、今こうしている間にも戦い続けているのだと。マンボウの生む3億個の卵・産卵のために行進する数万の蛙。身近な生の存在は、まるで自分を形作る細胞の一つ一つが日々繰り返している生死のように感じられました。
そしてそれだけでなく、まるで薄皮をはがせば、僕はきっと感情と思考のかたまりであり、そしてそのことに僕は本当の意味で気づいているのだろうかと考えさせられたのです。



散文(批評随筆小説等) 【批評祭参加作品】ショートレビュー Copyright 相田 九龍 2011-03-06 12:16:24
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第5回批評祭参加作品