夜に遊ぶ
木屋 亞万

木馬が回転する荒野
芝生の丈は坊やの前髪
風が吹いても揺れやしない
朝の光を忘れた頃に
夕暮れ、赤い日が落ちる
白いタテガミ、回転木馬、揺れぬ緑の草の上

空から降るのは億千の星の粒とか
彗星の砕けた足跡なのだとか
月の夜道も暗くない
キラキラ輝く石の散る道
お菓子の家はまだ遠い
甘い匂いの雲の群れ
月に絡まる黒い綿菓子

髪が桃色の女の子
歩くとサラサラ揺れている
桃の匂いか桜の花か
梅が咲くように冷たい目をして
肉と思えぬなめらかな頬
白さは月を越えている

青い瞳の男の子
今日も海からやってくる
空から落ちたか
海から湧いたか
澄んだブルーのその瞳
透明なのに奥が見えない
世界を止める冷たい思考

クジラ、トナカイ、パンダにコアラ
キリン、ライオン、トド、シマウマ
地面に並べて今日もまた
平面的な動物のビスケットたちが
戦って仲良くなったあかつきに
二人の子どもに食べられる

天の川から汲みだした
ミルキーな水を手に溜めて
ぼたぼた垂らして飲み干すと
喉がキラキラ輝いて
身体が泣いてるみたいに光る

「悲しいね」って桃色の髪を揺らして呟くと
「そうだね」とすぐ青い目が瞬きしながら返すのだ

ビスケット生地の破片が残る
地面をそっと踏みしめて
歩けど歩けど
側にある回転木馬は近いまま
遠くならずに
この夢の世界の狭さを物語る

「また明日だね」とタテガミを
なびかせながら木の馬が語れば
光が少しずつ辺りを洗い流してく
星は光に隠されて
桃色の髪は花になり青い瞳は空になる
タテガミは白い雲として
天地に裂かれる二人の変わり
そっと涙をこぼす日もある


自由詩 夜に遊ぶ Copyright 木屋 亞万 2011-03-06 03:30:29
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