うそをつけない あなたに
鵜飼千代子

                  
             男は単純にうそをつく
             あなたは人にうそをつかないため
             自分にうそをついてしまうから
             追い込んでいくのだ

             それも完璧に 
             鍵をかけて

             素直になれと 
             北風じゃあるまいし
             真直ぐいっても駄目なんだ
                                   
             背後から 
             脇腹くすぐってやらなきゃ

             僕は普通の人だから
             シナリオを書いて君と会う
             なのに いく通りのシナリオも
             裏切ってくれるのがあなただ

             とたん真っ白になり
             かっこ悪い男に成り下がる
             かっこつけさせてよ

             ねえ 何にも考えないで
             野川公園で遊びたい

             君が言ったとき
               
             僕は 
             ものを考えていないときは
             ない

             と答えた

             とても寂しそうな顔をしたね
             気付いていなかったんだ
             
             この憩いが 
             無意識下のコンピューターに
             はじき出されているということに

             それだけでもう 
             精一杯だったのだ

             普通に呼吸できるところで
             空気のありがたさは感じない

             だから 
             さらに求めてしまうのだ
             僕のさらなる幸せのために
             努力してくれることを

             強くなんてならなくていいよ
             人を傷つけることなど
             覚えなくていいよ

             誰でも なにものでも
             やわらかく受け止める
             時にぴしゃりと打たれて
             目が覚める

             そのこころだけ 
             無くしてしまわないで
             
             普通じゃないと
             悲しまないで 泣かないで

             あなたが持っているもの
             僕は持っていないけれど
             あなたが欲しいものを
             僕は持っている

             いいじゃない それで
             同じであれば楽だけど
             別れるのも簡単だ
             あなたでなくてもいい 
             
             安いところで甘んじるなよ
             我慢して捻れるなよ
             高圧流して ヒューズとばすなよ
             小さな枠に自分を閉じ込めれば
             弾けてしまうこと
             もうわかっているでしょう

             ここにおいで

             あなたといれば
             世界が 変わる

             僕は それを
             知っている



         1997.09.04.  YIB01036 Tamami Moegi.
          初出 詩のパティオ
          改稿 1998.08.13.  NIFTY SERVE FPOEM



自由詩 うそをつけない あなたに Copyright 鵜飼千代子 2011-03-06 02:59:49
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