肉塊はまだ生きていて生暖かく光っていた
hossy

濡れた光を放ち
不気味なぬめりをもつそれは
触感を刺激し
全身を収縮させる

彼女は悲鳴をあげ
パニックに陥る

痙攣の営利な波は一瞬にして伝わり
心臓を震わせた

音叉の片側
共鳴

両生類の肌と軟体動物のうごめき
露出して滑らかにつやめく
パニックの中で後ずさりするものは
本能的にそれを恐れている

底の方にある記憶は
すべてを萎縮させる

逃げてしまう方がよいか
叩き落す方が得策か

内側との遭遇
意識できない湿気に満ちたもの

ぬらぬらとしたそれは
彼女を閃光としての死に誘い
恐怖まじりの生へ引き戻した

いったいそれがどれほどの害を及ぼすのだ
毒もなく
皮膚を溶かすわけでもない

後ずさりする
彼女のなかにこそ毒素が満ちている

脅えながら
激しく痙攣さえしたのは
手に触れた醜さと
なめらかな曲線を描く
自身の生の美しさからだったのか

高慢な思い込みに気がつかない

男たちは彼女の中のぬめりを直視できたか
女たちは彼の手のもつうごめきを吐気を我慢できたのか

どろどろとした内臓
滴り落ちる分泌物
美しい薄皮を取り去ると
両生類を超えたものが閉じ込められている

人の形をした条虫の群れ
血で満たされた肉
同じ物との邂逅こそが
すべての原因だった

ぬらぬらとした下等動物
それらはけして薄汚いものではなく
勝手につけられた
象徴としてのしるしを負わされているだけなのだ

薄い皮を通し
自己の内部に触れる
ただそれだけのことだった

何故あれほどまでに拒否反応をおこすのだ
その答えは彼女の顔に浮かんでいる



自由詩 肉塊はまだ生きていて生暖かく光っていた Copyright hossy 2011-03-05 23:00:59
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