柔らかな化石
nonya

どこまでも続こうとする坂道
喘ぎながら

繰り返される独り言のような呪文
聞きながら

やみくもにしがみついたあなたの背中
眠ったふりしながら

安いおしろいに混じった汗の匂い
嗅ぎながら

白い花もしくは小さな洗濯物の影
盗み見ながら

あなたが辿り着いてしまう場所
半ば予期しながら


おへその下あたりがくーんと痛んだ


意識の地平の裏側で
うごめく無意識のマントルは
ときどき日常のプレートを
過去へ引きずり込もうとする

やるせない横揺れとともに
せり上がる時間の断層
その狭間に見え隠れする
記憶の化石は
どれもみな柔らかすぎて

おそるおそる手のひらにのせると
あなたの背中の温もりらしきものを残して
柑橘臭のする思い込みは
長く糸をひきながら
タイルの床に流れ落ちた




自由詩 柔らかな化石 Copyright nonya 2011-03-05 14:08:46
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