柔らかな化石
nonya
どこまでも続こうとする坂道
喘ぎながら
繰り返される独り言のような呪文
聞きながら
やみくもにしがみついたあなたの背中
眠ったふりしながら
安いおしろいに混じった汗の匂い
嗅ぎながら
白い花もしくは小さな洗濯物の影
盗み見ながら
あなたが辿り着いてしまう場所
半ば予期しながら
おへその下あたりがくーんと痛んだ
意識の地平の裏側で
うごめく無意識のマントルは
ときどき日常のプレートを
過去へ引きずり込もうとする
やるせない横揺れとともに
せり上がる時間の断層
その狭間に見え隠れする
記憶の化石は
どれもみな柔らかすぎて
おそるおそる手のひらにのせると
あなたの背中の温もりらしきものを残して
柑橘臭のする思い込みは
長く糸をひきながら
タイルの床に流れ落ちた