ラバー・ソール
関口 ベティ

男はうろんな目で
メイビー・アイ・ラブ・ユー
と、どこかで聞いたようなフレーズを呟いては
またひとり
私をみながら笑っている

ギターをつま弾く彼の指は
長年の栄養失調のため
少しく 曲がっている

夜明けには雨がくるというが、どうであろうか

私は金柑を砂糖で煮ながら
周作を読む
甘い湯気で曖昧にぼやけた私たちの境界に
緊迫感のない断罪が
金属のメロディが
滲みながら落ちてゆく

今日でない明日ならば
ひとつ 何かを変えてくれると

沸騰してぐずぐずになった柑橘が約束する
そのような気が
したのだ


自由詩 ラバー・ソール Copyright 関口 ベティ 2011-03-04 20:56:37
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