じゃあ
相田 九龍

トントントントン
包丁の音がする
君は手際よくテーブルの上に出来あがった料理を並べていく


 いめぇじの世界で
 ダンスを踊る人たちが
 手を繋いでは千切れて


あら、忘れていた、と
君はお米を炊き始めるのだ
米を研いで、釜の底を拭いて、ジャーのスイッチを押すのだ


 千切れた肉体はいめぇじなので
 実体はないけれど、いめぇじなので
 しばらく実体のように感じずにはいられません
 はい、はい


すっかり並んだ料理が
じわじわと冷めていくのを眺めながら僕たちは
お米が炊けるのを待っている
じわ、じわ


 人が入ってくる
 出ていく
 その人の体は、ここに残っている


お米が炊けないので
料理には手をつけられない
つまみ食いとかそういうのを
割と嫌うタイプなのだ、僕は


 その人はどこに行ってしまったのだろう
 体だけ置いて
 これは、君のすべてだと言うのに


お米が炊けるのを
二人で向かい合って待っている
あんな話やこんな話を
しないまま、待っている


 いめぇじの世界では
 ダンスを踊る人たちの肉体が千切れて
 笑っている顔が浮かんで
 少し気持ち悪いのだ、僕は


待っている
お米が炊けるのを待っている、僕たちは
じわ、じわ


自由詩 じゃあ Copyright 相田 九龍 2011-03-02 21:48:59
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