近年におけるゾンビの特色と傾向
只野亜峰
結婚は人生の墓所でありますが、時々墓場から出てくる人がいます
彼らの活動内容には個体差がありますが、多くは異性の肉体を求めます
活動時間にも個体差がありますが、週に数回から長くて一日数時間程度です
彼らの多くは活動時間を終えると、再び定住先である墓場へと帰っていきます
これをゾンビと言います
ゾンビの多くは墓所で暮らすパートナーにゾンビである嫌疑をかけられますが
逆ギレや泣き落とし等で嫌疑をかけるパートナーを非難する事によって難を凌ぎます
が、活発な活動を続けているとパートナーが特務機関に調査を依頼するケースもあります
調査の諸費用は依頼者の負担となり、金額は数十万円から数百万円に上るケースもあります
この特務機関は俗に探偵社や興信所等と呼ばれます
特務機関の中には稀に無認可で営業している異教徒の団体もありますので注意が必要です
ゾンビの多くは特務機関の調査により動かぬ証拠を叩きつけられると泣き崩れます
この現象は当初、罪の意識から生まれる贖罪的な行動であるとされてきましたが
実際は自己保身のための打算的な行動である事が近年の研究で明らかにされています
その後ゾンビの多くは俗に家庭裁判所と呼ばれる場所で宗教裁判にかけられます
多くの場合、この宗教裁判において婚姻関係や子供の親権・遺産に関する取り決めを行います
宗教裁判において墓所を追い出されたゾンビは世間から冷たい視線を浴びる事になります
この冷たい視線によりゾンビの魂は浄化されるとされ、これをゾンビバスターと呼びます
ゾンビの多くはゾンビバスターから逃れるために新たな墓所の建設に取り掛かります
上手く生者を誑かし墓所に入る事に成功したゾンビは、再びゾンビとしての活動を再開します
近年では墓所に入らなくて良い気軽さから好んでゾンビと関係を結ぼうとしたり
死者を積極的にゾンビにしようとする生者も現れ始め、バイオハザードが懸念されています
また、このようなアウトブレイクの因子となる生者を特にリビング・デットと呼びます
リビング・デットの多くは罪の意識が希薄なためにゾンビバスターが効きにくく
宗教裁判においても多くの責任を問えないために有効な対抗手段が存在しないのが実情です
パートナーのゾンビ化を防ぎアウトブレイクを防止するためにも
リビング・デッドから事前にパートナーを守る体制と堅牢な墓所の建設が望まれます