宝探し
……とある蛙

学習ノートの裏表紙
鉛筆手書きの宝島
包装紙の海図を持って
君はダンディ、僕 博士
太っちょガバチョを従えて
駄菓子屋で買った黄粉飴
カバンに入れて粉だらけ
黄粉に塗れた三人の
宝探しが今始まる。

目印はほったらかしの麻の縄
ビワの木の枝から垂れ下がる
それを頼りに枝の上
下三〇度にある蛙池
どろっとしたアオミドロ
その中に見える蛙の卵
そこから真南に三〇歩


一〇センチ二〇センチ
ロウソク灯して行けマスかぁ
バビロンまでは何センチ※


その地点には柿の木が
渋柿なのだが春先に
イラ蛾の幼虫が柿の葉一杯
すごく危険なのでした。
その柿の葉を注意深く
風に吹かれて落下した
その地点から真北へ一〇歩


一〇センチ二〇センチ
ロウソク灯して行けマスかぁ
バビロンまでは何センチ※


柔らかな地面がその地点
その下にはお宝が

せっせ せっせ と掘ってみる
せっせ せっせ と掘ってみる
せっせ せっせ と掘ってみる
せっせ せっせ と掘ってみる

悲しいことに黒土は
次第次第に赤土に
壊れた茶碗や急須のかけら
お宝 なかなかでてこない

そのうち夕暮れ
一人減り
薄暗くなり
また一人減り
独りぽっちになっている



一〇センチ二〇センチ
ロウソク灯して行けマスかぁ
バビロンまでは何センチ※


今も変わらぬ独りぽっちの宝さがし。


  ※「ひょっこりひょうたん島」から
    作井上ひさし


自由詩 宝探し Copyright ……とある蛙 2011-03-01 20:03:58
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