どこからか
殿岡秀秋
締めきった部屋の中にいて
小さな風を感じる
どこからきたのか
あたりをみまわす
ベッドで寝ているぼくの胸を
よぎる小さな影
どこからきたのか
窓に仕切られた空を見る
独りのときも
ぼくの胸には
何人かの小さな人がいてうごめく
気配
胸の中に温かい部屋があって
寝ている小人もいれば
忙しく
働いている者もいる
ぼくがでんぐり返しをすると
部屋からたくさんでてきて
ぼくのからだを内側からささえながら
動かしていく
ぼくが友だちと遊ぶと
いっしょになって
喜んでいるのが
たちのぼる汗の熱気でわかる
たくさんいる小人たちに
なにをしたいのか
聞く
彼らはぼくにくつろいでほしいという
過去に傷ついたときの影を負った
小人たちがいる
そのひとりと向きあって
傷ついた場面をおもいだしていく
共に泣き共に怒りながら
その場面を生きなおすことで癒されていく
次の日には別の小人が負っている
影と向きあう
いろいろな場面を繰り返し想いだすと
小人たちは軽くなって
ピンポン玉のように
弾けるようになる
実はたくさんの小人に支えられているので
ぼくは彼らの代表にすぎない
小人たちに息をおくりこむ
それぞれが深呼吸する