雨模様
ベンジャミン

三月ですから
春の匂いをただよわせる風も吹き
草木の色も何となく鮮やかに見えるのです

あなたは
うまくふくこともできない口笛で
僕が知らないメロディーを
そんなものたちに聴かせるように
気持ち良さげに鳴らしています

あなたは
僕の考えがわかっているような口ぶりで
「聴こえてくるものに耳を澄ませばいいの」と
僕が知らないメロディーの
そんなリズムの歩調で歩くので
僕はついつい
あなたの背中ばかりを見つめています

「わたしが三月なら、あなたは二月ね」と
少し前を歩くあなたが言うので
僕はあわてて隣に追いついたのだけど

「三月は雨の日が多い気がするわ」と
僕に横顔を見せないように
また少し前へ出てしまう
あなたを追いかけようとしたけれど
そうしないほうが良いと思いました

ふと気がついたことは
あなたの白いスカートに
うすい水玉模様が見えるのを
そんな雨のせいだろうかと思ったことです

三月は
水と空気を混ぜたような淡い青色で
あなたが少し急いで歩くのも
はやく春へと向かいたいからなのかと

僕はあなたの横顔を見ないように
けれどしっかり手を握って
一歩でも先に待つ季節に近づけたらと
四月に向かって歩こうと思います

あなたの白いスカートが
雨模様に見えないように


自由詩 雨模様 Copyright ベンジャミン 2011-03-01 00:24:06
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