十八
佐古

このスカートにどれだけの価値がある


教室の机のにおい
黒板とシャーペンの筆圧と
だれかとだれかのはしゃいだ声を
どれだけ耳に溜めてきただろう

毎朝きみを嫌いになった
とても狭いその部屋に
いったい何があったんだ
きみのくちびるの裏に
いったい何があったんだ


排気ガス吸って生きてんの



制服の裾のほつれと
すりぬけていくきみたちの嘘
愉しい話だけをしよう
教科書を眺めながら少し泣いた

毎晩きみを傷つけたかった
だれかとの距離は腕の長さほど
どれだけの愛だったんだ
きみのやさしさの下に
どれだけの愛があったんだ


副流煙吸って生きてんの




たちどまれないような線路の上を
裸足で歩いてる気分の
誰かとおなじ歌を
ずっとうたう義務と

くるしくて終わりたいような夜を
三百六十五日を三度
ローファーを履きつぶすおんなじ毎日の
この学生証にどれだけの価値がある


  (それももうおわり、)
  (おんなじ日々はもうおわり。)




ねえこのスカートにどれだけの価値があった、?
ブレザーの皺が消えない
この制服にどれだけの、

(、……はなれがたいのはたしか)








自由詩 十八 Copyright 佐古 2011-02-28 20:47:00
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