トラウム
関口 ベティ

counting dead bodies like rams to the rhythm of the war bells.
汝見過ごすこと無かれよ
憂きものの坩堝
この平坦な砂礫をこの虎を
肺に流砂を抱き込んで
息もつけぬと咽ぶ日に
最早気付かであるべきか
地平の向こう
宝と思い込むパノラマの夢
見遣れ、佇む母は涙に暮れ
届かぬことを知っている
war by the war
わたくしは丘に立ち
あの日もひたに
世の終わりを待っていた
告げる霧の匂いに寄せて走る海原
子等は死体を数え
苗床のように寝転がる
やがて来る静寂の夜に
喧しく銅鑼を叩き続けるは妥当
若葉燃ゆ若葉燃ゆ
宛ても無くまた
この羽根は爛れ彷徨うのだ
こぼれる一滴
焦がす他に平癒を知らない次の獣へ
嗚呼またも百足這う腕を示し
袋小路の楽園を稲妻で導く定めよ

君よ何故知らなかった
負った暗きの
その深みをもっと 恐れるべきだったのだ!


自由詩 トラウム Copyright 関口 ベティ 2011-02-28 08:29:01
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