ほつれる
nonya

ギザギザの
気温の折れ線グラフの
端がほつれて
光の縦糸が
眠たそうな家並に
垂れ下がる

カチカチに
凝り固まった表情筋の
端がほつれて
微笑の横糸が
路地裏の野良猫を
追い駆ける

いつも遠回りして
背中のほうからやって来る
悪戯っぽい季節が
見え透いた変装をして
電柱の陰からこちらを
窺っているから

知らんぷりして
昨日までの重たいコートを
こっそり脱いだら
モノ と ヒト の交差点に
うずくまったわだかまりを
跨いでみるが

いつかは
ポケットの中に溜まった
忘れてもいい記憶の欠片を
シャリーンと鳴らしながら
飛び越えてやるんだ

ほつれた冬の尻尾に
くすぐり回されて
くしゃみが出そうな空を
涙目で眺めていたら
南風にそそのかされた
今日がほつれた




自由詩 ほつれる Copyright nonya 2011-02-27 19:13:44
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