いちねんにいちど
吉岡ペペロ
ツバメグリルにはいちねんにいちど行った
いちねんにさんど母と会っていたのだが
そのうちいちどはツバメグリルでだった
ぼくと妹の誕生日がちかかったから
そこで母が祝ってくれたのだった
ほんとうはかなしかった
たぶんさんにんともかなしかった
ハンバーグのソースもステーキの脂身も
ぼくが中学生になってからのミルク入りの珈琲も
フォークもスプーンも白いお皿もナプキンも
それからさんにんで泊まった品川プリンスも
ぜんぶぜんぶかなしかったのに
なんで女の母さんやまだちいさな妹や
多感であるはずのぼくは
がまんなんてしていたのだろう
だからいまもツバメグリルにいくたび
ぼくはなにかをがまんしている
それが懐かしいかなしみになっている