いちねんにいちど
吉岡ペペロ

ツバメグリルにはいちねんにいちど行った

いちねんにさんど母と会っていたのだが

そのうちいちどはツバメグリルでだった

ぼくと妹の誕生日がちかかったから

そこで母が祝ってくれたのだった

ほんとうはかなしかった

たぶんさんにんともかなしかった

ハンバーグのソースもステーキの脂身も

ぼくが中学生になってからのミルク入りの珈琲も

フォークもスプーンも白いお皿もナプキンも

それからさんにんで泊まった品川プリンスも

ぜんぶぜんぶかなしかったのに

なんで女の母さんやまだちいさな妹や

多感であるはずのぼくは

がまんなんてしていたのだろう

だからいまもツバメグリルにいくたび

ぼくはなにかをがまんしている

それが懐かしいかなしみになっている




自由詩 いちねんにいちど Copyright 吉岡ペペロ 2011-02-26 22:36:33
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