空の青さが眩しくて支えきれずに
木屋 亞万

雲ひとつない空の青が眩しい
どこに太陽があるのかもわからないくらい
水色がひたひたと目に入ってくる
校長先生と呼べる人がいる場所を遠い昔に離れ
気だるい朝「今日は雲ひとつない晴天です」と
快活に言う人が近くにいなくなってしまった

春が指で触れるところまで来ていたのに
つかみ出すことができず
また元の所へ引っ込んでしまう
指先にまだ花粉の匂いが残っていて
さながら指はミツバチのように
爪は毒のない針となり
袋詰めされたパンを裂いていく

四方を壁に囲まれた場所で
過ごすことが当たり前になって
僕らはあまり空を見なくなった
はるか昔の人類はもっと自由だっただろうに
晴れの日の天井ほど意味のないものはない
まるで決まりごとのように
どの建物も積み上げられた箱のような形をして
幼児が遊ぶ積み木をコンクリートに変えて大きくしただけ
大人という言葉には単に大きいという意味しかないのだ

いつだって空は青いのに
僕は箱の中に籠もっている
たくさんの人が箱に籠もりながら
箱から箱へ移動して誇らしげにしている
「あいつは一つの箱に引きこもっている」と
目糞が鼻糞を笑うようなことを恥ずかしげもなく繰り返して

空、一日の半分は青い色をしていて
もう半分は黒い色をしている、空
その狭間には鮮烈な赤が入り込んでいる空
地球のどこか半分は常に空が青く
もう半分は黒い色、その間には赤い線
ぐるぐる回る黒と青

地球は青かったと言ったあの人は
たぶん青い部分しか見てなかったんだ
本当はチュッパチャップスみたいに二つの味が楽しめる
カラメル味の甘い夜としゅわしゅわソーダの青い空
赤いラインはイチゴ味
赤道と最初に名付けた人は
そのことに気付いていたのかもしれない

背中が青空になっている人が
目の前を走っている
自転車で
背中が窓のように広大な青空の入り口になっていて
僕はとても爽やかな気持ちになった
眩しくて澄んでいて鮮やかで
でもどことなく悲しげなその青色を眺めて
僕はこの人を支えたいと思った

「雲ひとつない晴天です」とこの頃は誰も言わない
「はい、元気です」と返事する人もいなくなった
特に言う必要もないのかもしれない

最近の僕はといえば
あの人の背中の青空を
なるべく晴天にできるように
箱から出ようとしてみたり
地球の味見を始めたりしている

空は
そんな努力をしなくても
誰にも支えられず高い位置にあって
今日も眩しく
とても青い


自由詩 空の青さが眩しくて支えきれずに Copyright 木屋 亞万 2011-02-26 02:32:04
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