人別調
あおば

                  110225




行人偏は疲れると
台所の包丁とまな板が相談して
ストライキをするので
来期の売り上げが期待できなくなると
専業主夫気取りの亭主はごろつきと呼ばれて
内儀からゴキブリ扱いされて
禿びた箒の先で追い出されてしまうが
それもよいねと世知辛いサイフの底はポイントを数えては
200円分だけ安くなったのだと考える
そのくせ肝腎のポイントが使えるお店の所在地は覚えていない
創立が新しすぎて経営者のお名前は
江戸時代の人別帳には載っていないのかもしれませんと
先祖を調査しにきた研究員が顔を顰める
予測が外れてテーマが成立しないのではないかと顔に書いてある
お寺参りはしても古くさい人別帳なんか読んだこともありません
楷書で書いてあってもふりがながなければ読むことができません
故人の業績が反映するとしたら
征服された後には何百年も隷属させられて
挙げ句の果ては河原乞食の末裔と呼ばれているのだから
いまさら人別帳に載っていなくても構いません
ストレスには慣れておりますから
余興に逆立ちしてお見せいたしましょうか
古希間近な老人は
誰に聞かせるとつもりもないのに背伸びしてから
座り直すのだからと
行人偏は見ているだけで疲れると
病垂を味方につけて人偏は
水道管の上で正座を繰り返す
不思議なほど真面目な景色が
今朝も見える
ドラッグストアで汚れていない段ボール箱をもらったので
早く引っ越し先を決めて
飛んでゆきたい
ボロボロになった人別帳を隙間無く詰め込んでから
不要品の買い取りをしていた叔父さんにもらった棹秤で重量を計測してから宅配便を呼ぶ



自由詩 人別調 Copyright あおば 2011-02-25 23:21:50
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