猫と俺
田園

低空飛行を続けた俺は、明日から来なくて良いよとお偉いさんに言われた。
反省…?怒り…?否。
まず思ったのは猫のメシが買えねえなあ、と言うぼんやりした事だった。
その猫は、典型的、漫画の様に段ボールに入れられ、道の隅に居た。
全く、ブサイクな猫だった。
雑種に違いない見た目。
汚れてもう泥のこびりついた体。
心なしか目が疲れているように思った。
俺は何故か分からないがそいつを拾って、帰路についた(疲れていたのは俺かもしれない)。

そして今。
アパートの一室に猫を見つつ、あぐらを書いて座っている。
そのアパートはペット不可なのだが、暗黙の了解か何か知らないが、ちらほらと動物を飼っている住人がいる。
さて、とまた呆ける。
唐突に無職になった。
金、入らなくなった。
このブサイクな猫と俺。
どうすればいいだろうか。
考えをチラシ裏に書いてみるが、どう足掻いても三十路を過ぎてわりと経ってる男を雇う会社は、そう無い様に思う。
その間、親から金を貰わねば…貯金を切り崩しても無理かも知れぬ。
こういう事なら、貯金をもっと本気でするべきだった。
親父か。
嘆息した。
俺はまだ若い頃、粋がって親父との中が最悪と言っていい程悪くなった。
勘当同然で家を出て、昨日までいた会社に入ったのだが。
不況の波はここまで来たのだな。
「仕方がない」
その言葉のみ浮かんだ。
猫は…もう逃してやろうか…。この面なら確実に保健所行き、はいさよなら。
俺も、身一つ残っただけの男。
ホームレスと言う言葉がよぎり、あぁ、欠伸が出た。
就活をしようか。
というかそれ以外の道は無い。
俺と猫。
外は嫌味な位、晴天。
なるようにしかならねえな…。
そう心で呟いて、猫を引き寄せ、喉を撫でた。



自由詩 猫と俺 Copyright 田園 2011-02-25 14:35:48
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