殺風景
……とある蛙

荒川の河川敷 土手の下に
古ぼけた木造アパート
モルタル塗らしかった壁の
モルタルは剥がれ落ち
グレーの下地に
枯れてしまった
蔦のツルがへばり付いている

空き家のようだが
夕暮れになると
一部屋だけ行灯のような
淡い明かりが灯る
闇が濃くなる刹那の
一瞬の人影

夜が自己主張する時間には
すべての部屋の窓は
モルタルの剥がれ落ちた
壁と同化する。
さらに暗闇の漆黒の
空気と同化する。

あばら家の
ほとんど道に接している敷地に
ポツンと桜の樹一本
北向きの公道に接して枝を広げる
枝にほとんどつぼみは無く
僅かな日当たりを縁よすがに生きている。

という風景の中に気持ちが沈んでいる
殺風景という風景


自由詩 殺風景 Copyright ……とある蛙 2011-02-23 09:53:53
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