スローダンス
高梁サトル


白夜に立ち尽くす
冷えた足取りで
散り散りになった落ち葉を拾い集める
記憶を繋ぐ喪失の季節に
最愛を探す仕草だけが影を重ね
闇を深めてゆく
切り取れば
ひとつの証明にもなりそうな人型は
消えそうな声だけを追いかけて

虚空に手を伸ばしても何も掴めない
霞む朝霧の中で
もしも、と祈るいびつな五感の
すべてを捧げ尽くして

(誰よりもあいしている)と

伝えられなかった
ただそれだけが、むくわれない

永遠に

深呼吸をして
ちいさな野ばらの蕾を思い描く
瞼の裏でやわくほころぶ色彩を
すこしだけ滲ませながら

玄関に並べたしろい靴を履き
背筋を伸ばす
軽やかに開け放った扉の向うでは
行き先も知れぬ
春が待っているのだろうから


自由詩 スローダンス Copyright 高梁サトル 2011-02-23 02:37:26
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