数式のまどろみ
アヤメ


5時限目 人の心を読む授業

鉛筆の影がノートに映る


あの子は几帳面に 鋭利な鉛筆を持って数式を解いている

僕は陽にあたりながら 丸っこくなった鉛筆を持って

πの可能性を探っていた


Xは笑っている

=は無表情だ


丸い鉛筆は細部を書くには適していない

当たり障りがないところほど僕に見合った数式はない


先生は真面目に板書を続けている

僕の中で購買出身のあんぱんが居座っている

暖かさに僕は思わず目を閉じた


緩やかなピンクの下り坂

急カーブの僕のノート

どこかで見かけた少女


まどろんでいる現実 幻想という変奏曲

かなたからメゾピアノのソプラノが聞こえる

整列した字がよがむ


教科書が水平に落ちた

僕の幻想 枝葉のような僕の現実




自由詩 数式のまどろみ Copyright アヤメ 2011-02-20 17:41:14
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