数式のまどろみ
アヤメ
5時限目 人の心を読む授業
鉛筆の影がノートに映る
あの子は几帳面に 鋭利な鉛筆を持って数式を解いている
僕は陽にあたりながら 丸っこくなった鉛筆を持って
πの可能性を探っていた
Xは笑っている
=は無表情だ
丸い鉛筆は細部を書くには適していない
当たり障りがないところほど僕に見合った数式はない
先生は真面目に板書を続けている
僕の中で購買出身のあんぱんが居座っている
暖かさに僕は思わず目を閉じた
緩やかなピンクの下り坂
急カーブの僕のノート
どこかで見かけた少女
まどろんでいる現実 幻想という変奏曲
かなたからメゾピアノのソプラノが聞こえる
整列した字がよがむ
教科書が水平に落ちた
僕の幻想 枝葉のような僕の現実