日本料理店
朧月

古い家屋に手を入れてできた料理屋さんは
まるで人をこばむように
さっさとおゆきなさいと 
言うように人の気配を消す
庭に咲いた花まで

初老の店主は言う
ひとつひとつ皿を運び
魚です 野菜です 想いです
箸の運びまで指定する

掛けられた絵からは歴史が
閉じられたドアから森が
ひそんでいるから私は
息を殺し背を正す

ありがとうございます と言いなさいと
教えられたあの頃を
なぜか思い出しました
祖父母の顔と共に

店にいる人たちは
全員 女性で
年の順に座りました
上座は 空です



自由詩 日本料理店 Copyright 朧月 2011-02-19 21:30:11
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