小川 葉



歯が折れた

親から
もらった歯だ

わたしは
気づかれないように
ちり紙にくるんで
ごみ箱に捨てた

まだ丈夫な歯だった
なぜ折れてしまったのだろう
歯だけなら
生きていけたのに

歯はいつまでも歯のまま
ちり紙にくるまれて
そこにいた

ごみ箱もまだ
ごみ箱のふりをして
そこにいた



自由詩Copyright 小川 葉 2011-02-16 01:53:08
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