君の午後
塔野夏子
目を閉じて
果実たちの歌をうっとりと聴いている君の午後
に あたり前の登場人物のようにとどまっていたいのに
何故だろう砂のようにこぼれてゆく僕の輪郭
すっかりこぼれてしまう前に
君に気づいてもらわなくてはと思うけれど
君のそのうっとりを壊したくなくて
僕は呼びかけることができない
僕がたぶん君の知らない遠くで
もういちど輪郭を取りもどす頃
君の意識の底をふと掠めるだろうか――
果実たちの歌が流れていたある午後
に つかのま登場した人物の気配
自由詩
君の午後
Copyright
塔野夏子
2011-02-11 20:02:23