息遣い
乱太郎


唇を重ねたように
息がつまりそうな真夜中
声を荒げて
逃げだしそうになる都会の真ん中で
小さな羽虫たちは
か細い灯りに寄り添い
汗臭い涎を垂れ流している

相槌のない会話が延々と続き
夜の皮を剥ごうと
必死に両手をばたついて見せるが
誰も本当は望んでもいない
小指で差し出してくれる薬があればいいと

脈拍が踊る

息遣いが荒いのは
誰のせいでもないのは分かっている
ここはアウシュビッツでもないし
アルカトラズでもない
それでも
ここから出ようとしないのは

圧迫感が恍惚になって
もしかしたら
真珠の夢を拾うことが出来るかもと

小さな羽虫たち
息遣いが夜を灯す


自由詩 息遣い Copyright 乱太郎 2011-02-10 19:12:31
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