恋に落ちて
……とある蛙
○が□に惚れたのは
とても嵐の午後でした。
大きな嵐が横切った
山を越えて谷を越え
川を跨いで横切った。
嵐は朝から走っていたが
なぜか□は電車に乗って
○のいる図書館に
ビニール合羽とゴム長で
御猪口になったビニール傘を
引きずり □は現われた。
それは嵐の午後でした。
○は□にほほ笑んだ
とても惨めな格好で
合羽もかなり草臥れていて
全く冴えない□です。
それでも嵐の午後でした。
□は○と嵐の前の日に
会う約束をしたのです。
とても分厚い専門書
□の持っている専門書
それを貸す約束をして
□は○がとても気になって
雨でも風でも嵐でも
電車がすごく遅れようと
たとえ○がいなくとも
たとえ図書館が閉まっていても
□は使い古しの合羽の中に
ビニール袋にいれた本を抱え
ビニール傘を斜めにさして
遅れて動かない電車に乗って
そして、嵐の午後でした。
○は□にほほ笑んだ
とても惨めな格好で
合羽もかなり草臥れていて
全く冴えない□です。
とにかく大学に向かったのです。
図書館の前
大きな銀杏の木の下に○がいて
そして、□にほほ笑んで
二人の話が始まったのです。
どこにでもある二人の話
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妻