ふ
ヨルノテガム
ふゆの風の厳しいです
こどもの消える雪の綿迷路
海の生き物の死骸大きなが
砂に打ち上げられて
月の笛の音を一晩中 開いた口で
聞き惚れていたようでした
音符は苦しみを解体していきます
父に触れると壊れます それは
取り扱い説明書に書くまでも無く
当たりまえなんですから
右折れ左折れ緩いカーブの、
向こうの見えない道へ行きます
トンネルの汗のかきます
例えを忘れるくらいの寒さは
耳の先を冷凍庫にしちゃう
柔らかい鼻血がダラダラと流れて
乾燥してゆく部屋に飽きてきたところでございます
口の中に動物園を営んでいますが
虫歯の穴に落ち込んでいくウッカリ野生動物のことは
内緒なのです
若い女のガッカリとした帰り道にすれ違いますので
それはそれは怖いくらいガッカリして歩いています
深刻な夜に夢は現れなく いつまでも
現れないようでした
雨水は雪になって色んな旅に降り浮かぶ
そんな変幻自在はどこへいったのでしょうか 人間は。
つくづく ふゆの森、
しんしんとした世界に 半分だけ動く毎日の景観は
ただ流れ それを確認して過ぎるばかりです ました
沢山の美しいものの仮面が剥がれ落ち
足あとのように消えて失くなる
つきあたり 美と対峙するとき
わたしはひとり
思ふ、めぐる